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「サヤは?」
玄関に白いフワフワなコートを着込み、とても優しそうな顔つきの女性が、セフィリアに聞いている。
「サヤ様は、お先に寝られました。」
と、セフィリアは答えた。
女性は、サヤに似ている。
黒い髪、紅い唇。
女性の優しい笑顔は、サヤにも受け継がれているようだ。
どこか気品のある顔立ちや、態度はサヤにもあった。
「そう。あの子待てなかったのね。ウフッ。」
と、女性はいたずらな笑みを浮かべる。
「奥様。アイリュージア様。お帰りなさいませ。」
と、廊下の奥から年老いたメイドが、数人のメイド達を連れてやって来た。
どこか厳格の漂う女性だ。
「メリア。ただいま。サヤにお土産を買ってきてあげたというのに、あの子ったら待ちきれなかったみたいね。先に寝てしまったみたい。」
と、女性は子供のように舌を少し出しておどけてみせた。
「サヤ様は、お疲れになったのでしょう。さあ、アイリュージア様。お部屋に戻られて下さい。」
と、厳格そうなメイドは言った。
このメイドは、この屋敷中にいるメイドを全てまとめているメイド頭なのだ。
「アイリュージア様。わたくしはこれで。サヤ様の様子を見てお先に休ませていただきます。」
と、セフィリアは頭を深く下げてから、サヤの部屋へと向かった。
「セフィリアはいつ見ても上品ね。サヤに仕えてもらって良かったわ。」
と、アイリュージアは微笑んだ。
「セフィリアはわたしが育てましたから。あの子ほどのメイドはいません。あの子の見習いのアンリも、直にセフィリアのようになるとわたしは思いますよ。」
と、メリアは目をほころばせて言った。
「明日やっと彼が帰ってくるわね。」
と、アイリュージアは言うと、さっさと廊下を歩いていく。
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