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私が何か言い返そうとすると、彼は、私の肩を抱き、家に入るよう促した。
「ちょっと…いき…」
「いいから、入れ。」
表情は少しだけ男らしかった。
中に入ると、彼の顔はいつもの表情に戻っていた。
「お前さぁ~、綺麗なんだから、気をつけろよ…。変態が寄ってくんだからさ…。」
彼は手を横に広げ、溜め息混じりに話した。
どうやら、私に変態が纏わりついていたらしい。
それを助けてくれたようだ。
「…ありがと。」
「で、どうした?男にフラレたか?それとも便秘か?」
彼は笑顔で言った。
冗談のつもりなのだろう。
そのまま、靴を脱いで、中に入る。
「違う。」
私もそれに続いて入る。
相変わらず綺麗だった。
さすが週に2~3回は、桜が来ているだけはある。
だらしない彼が、掃除だけはマメにするなんてことは絶対にない。
「なんか飲むか?」
キッチンから声がかかった。
「うん。飲む。お酒以外で。」
「わかったぁ~。」
彼は結局、オレンジジュースを持ってきた。
「で、何の用事だ?生徒会か?」
彼はソファに腰かけるなり、すぐに聞いてきた。
少し面倒くさそうな表情だ。
そんなに私は、生徒会、生徒会って言ってるのだろうか?
少しだけ淋しくなった。
「別に…なにもないし…ただ…ちょっと会いたいなって…」
最後の方は恥ずかしくて、声が小さくなった。
「なんて?最後の方が全くわからん。ちゃんと話せ。」
彼は、不機嫌な顔で言った。
なんか辛いな…。
別に迷惑かけに来たわけじゃないのに…。
「ちょっと会いたいなって、思ったから…。」
勇気を出して、はっきりと言った。
「…そんなことか…。」
彼は呆れたという風に、首を横に振った。
せっかく言ったのに、そんなことって、酷くない?
こっちは、勇気を出したのにさ…。
私は、オレンジジュースをぐっと飲み干した。
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