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「それくらいで、家の前に立つなよ。別に何時来てもいいんだから。これ、持っとけ。」
そう言って、彼は何かを私に投げた。
鍵のようなものだった。
センスの欠片もない変な宇宙人のキーホルダーがついている。
「なにこれ?」
「ここの鍵。大和も桜も持ってるし、安心しろ。変な意味はないから。」
彼はニカッと笑った。
眩しかった。
「私、毎日来るかもよ…。いいの?」
「別にいいよ。好きに使え。嫌になったら、返してくれたら、いい。」
彼は素っけなく答えた。
もっと困って欲しかったのに…。
「あんたが嫌になったら、どうするの?」
「う~ん、家燃やすかな…?」
また彼は笑った。
笑顔で言うことじゃないけど。
「まぁ、俺は信じてるから、自分の気持ちを。俺は好きなもんはずっと好きなまんま。」
彼は、キーホルダーを指差して、これ小学校からのお気に入りと付け加えた。
「ふ~ん。じゃ、私も返さない。」
「そっか、よかった。」
彼が嬉しそうに笑った。
その笑った顔が嬉しくて、私も自然と笑顔になった。
しばらくの間、お互いに他愛のない会話を楽しんだ。
「そろそろ帰るわ。」
時間は7時を過ぎていた。
明日が休みでホントに良かった。
「そうだな。今日は自転車か?」
「ここまでは送ってもらったから歩きかな?」
「そっか。じゃ、送る。用意して、待っとけ。」
「何を待つのって…もういないし…。」
仕方なく待っていた。
用意っていっても、鞄くらいだし…。
「小百合ぃ~。玄関まで来てくれぇ~。」
彼の叫び声が玄関から聞こえた。
「待ってろって、言ったくせに…。」
私は玄関に向かった。
「よし、とりあえず、これ被れ。」
渡されのは真っ黒なフルフェイスだった。
「ちょっと何よ、これ?」
「だって、危ないだろ?法律で決まってるし。」
何のこと?
自転車にこんな大層なヘルメットを被るの?
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