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僕は二本の剣を右手は普通に、左手は逆手に持ちながら森の中を歩いていた。
僕の名前は龍桐秦羅(たつきりしんら)。
今現在、人に害を成す生物と言われる竜を狩る龍桐家の当主だ。
とはいえ、僕はまだ十八歳の高校生で未だ当主としての自覚が薄いんだけどね。
今僕は森に逃げ込んだという竜を追って龍桐家の家臣や分家の人々を連れてこの森に来たんだ。
「固まってばかりじゃ目立つし襲われたときに壊滅する可能性が高い。ここはいくつかの小隊に分けて捜索しよう。小隊分けはじぃやに任せるよ」
「承知しました。では皆の者。これより小隊に分ける―――」
じぃやは僕が幼い頃から色々と助けてくれる頼りになる人だ。
僕はじぃやがいるお陰で今なんとか当主に治まっていることになる。
「秦羅坊ちゃま。各小隊分けが終わりました。いつでも動けますぞ」
「ありがとう。それじゃあ皆、くれぐれも孤立しないように。散!!」
僕の指示を受けた人達は次々に各方向に移動していく。
彼等は先代の当主である僕の父の代から使えている人がほとんどだ。
だけど、父は僕が幼い頃に竜との戦いの最中で命を落としたらしい。
今となっては僕が今背に差している龍桐家当主だけが持つことを許される刀である龍滅刀『天之叢(アマノムラクモ)』が父の唯一の形見となっているんだ。
「じぃや、今回は僕も動くよ」
「秦羅坊ちゃまが直接ですか?しかしながら今は護衛となる者が―――」
「必要ないよ。僕一人の方が動きやすいし、それにじぃやも知ってるでしょ?」
「………分かりました。どうかお気を付けて」
「うん、じぃやもね」
僕はじぃやに手を振って走り出すと足に力を入れて木の上に飛んだ。
昔から僕等龍桐家当主の血筋の者は人間の持つ力の内、眠っている七十パーセントの力をリミッターを自分の意志で外すことで使うことが出来るんだ。
もちろんある程度の訓練は必要だけどね。
そして、いくらか走った後、僕はこれからの運命の決める場所へと来てしまったんだ。
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