序章

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でも正直な話、今そんなことで悩んでても仕方がないんだ。 分かってる。 今、僕がやらなくちゃいけない事は当主という立場にある僕自身が堂々と皆の前に出ることだって。 無理矢理頭の整理を付けた僕はさっさと制服を脱いでハンガーに掛け、祝い事などでしか着ない正装に着替えると皆の待つ広間へと向かった。 広間の扉を開けて見るとそこにはすでに沢山の人達がいて、皆誰もが楽しそうに話している。 その中で僕に向かって一人、白髪の老人が近付いてきた。 それはじぃやであって、僕が迷わないように来てくれたみたい。 「お待ちしておりましたよ秦羅坊ちゃま」 「ごめんよじぃや。それで、僕はどこに行けばいいのかな?」 「秦羅坊ちゃまの座るべき席はこちらに御座います」 僕が案内されたのはこの広間の上座に当たる場所だった。 その周りを見ると夕方に別れたはずの眞奈、貴道、遙の三人が仲良く話してたんだ。 びっくりしたよ。 だって、貴道と遙なら二人のお父さんが連れてきたんだと何となく想像がつくんだけど、眞奈に至ってはすぐ近所ってだけでこんな所に祝いに来てくれる理由が無いんだもんね。 一体、どうして眞奈がこの場所にいるんだろう。 そんな思いを抱きながら僕はじぃやのあとに続いて三人の前に立ち止まった。 「やぁ、わざわざ僕なんかの為に来てくれてありがとう」 「あ、秦羅君」 「何言ってんだよ。俺達は親友じゃねぇか」 「このバカの言う通りよ。親友として祝いに来ないわけないわよ」 「そっか、ありがとう。でも、どうして眞奈までいるの?」 「やっぱりそこに触れやがったな」 「眞奈も教えてやりなさいよ」 「う、うん。じ、実はね。家に帰ったら楊蒔(ようじ)さんが秦羅君の祝賀会をするから出席して欲しいって言われて……。や、やっぱり迷惑だったかな」 「そ、そんな事ないよ。眞奈もありがとう」 どうやら、眞奈がいる理由はじぃやが僕に内緒で来るように頼んだかららしいね。 とんだタヌキだよ。
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