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「どうぞ。ここ座ってください」
譲ろうかどうしようか迷っている内に先を越された。
朝の電車での出来事。
途中の駅でお婆さんが乗ってきた。
自分を含め、座席はもう人で埋まっている。
そして、誰ひとりお婆さんを気遣い立ち上がろうとする人物はいない。
席を譲らなければ……
頭では理解していても、なかなか動かない私の体。
そんな時だった。
自分が迷っていたことが恥ずかしくなるくらい、その男の子の行動は清廉で。
そして、その男の子の優しい笑顔に心惹かれた。
恋に落ちるのなんて何がきっかけになるか分からない。
その日から毎朝、名前も知らない電車の彼を目で追うようになっていた。
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