59人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな彼と話したのはたった一度だけ。
ただの自己満足かもしれない。
だけど彼に少しでも近づきたくて、自分を少しでも変えたくて。
席を譲るのも馴れてしまえば、当然のこととして出来るようになった。
そんなある日、駅の階段で大きな荷物を抱えて困っているお婆さんが一人。
生憎エレベーターは故障中。
張り切って荷物運びを手伝ったまではよかったが、予想以上に重い荷物に、私の体はいとも簡単にバランスを崩してしまった。
「あっ!」
「危なっ!」
……落ちる!
ギュと目を瞑りそう覚悟した瞬間、不思議なことが起こった。
落ちると思われた私の体は、温かくがっしりとした何かにしっかり抱き止められていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!