揺れる想い

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そんな彼と話したのはたった一度だけ。 ただの自己満足かもしれない。 だけど彼に少しでも近づきたくて、自分を少しでも変えたくて。 席を譲るのも馴れてしまえば、当然のこととして出来るようになった。 そんなある日、駅の階段で大きな荷物を抱えて困っているお婆さんが一人。 生憎エレベーターは故障中。 張り切って荷物運びを手伝ったまではよかったが、予想以上に重い荷物に、私の体はいとも簡単にバランスを崩してしまった。 「あっ!」 「危なっ!」 ……落ちる! ギュと目を瞑りそう覚悟した瞬間、不思議なことが起こった。 落ちると思われた私の体は、温かくがっしりとした何かにしっかり抱き止められていたのだ。
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