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「あっちへ逃げたぞ」
朝から騒々しいものである。屋敷の中を執事が行ったり来たりしている。アルデヴァネス家では頻繁に起こる出来事であり、いつもの光景である。
「ふふふ。 探してる探してる。 いつものことなんだから、いい加減私が隠れてる場所くらいわかるでしょうに」
少し小柄だが、雰囲気のある女の子が笑いながらその光景を眺めている。
「さて、今のうちに……」
彼女が歩きだそうとした一歩目でつまった。それもそのはず後ろで服を捕まえた黒服の男が笑顔でいたのだから。
「マローネ様。 どちらへ行かれるつもりで?」
男はにこやかにそう言った。
「アラン離しなさいよ。 今日はお友達とお買い物にいく約束があるのよ」
「マローネ様。 今日はピアノのレッスンの日でしたよね? そんな嘘をついても私は騙されませんよ」
「さぁ、先生をあまりお待たせてしてはいけません。 マローネ様の為に貴重な時間をさいてくださっているのですから」
嫌がるマローネはアランに引きずられながら、部屋の中へと消えていった。部屋が閉じてもマローネの嫌がる声が屋敷の中で響いていた。
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