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ピアノのレッスンはマローネの嫌がる声が廊下に響きながらも続けられた。
流石にマローネも観念したのか真面目にピアノのレッスンに取り組み、それまでの騒がしさが嘘のようにすんなりと終了した。
「マローネ様。 紅茶をお持ちしました」
扉の向こうからの反応はない。確実にすねている。ため息をつき、もう一度ノックをし、
「マローネ様。 今日もご要望どうり私お手製のスイーツをお持ちしたのですが、いかがなさいますか?」
と訪ねた。扉の向こうからの返答はない。完璧にすねているようだ。
「では、こちらは処分しますが、よろしいですね?」
少し間があったが、アランが扉から離れようと踏み出した瞬間に、
「待ちなさい。入っていいわよアラン」
とぶっきらぼうな言い方でマローネが答えた。
「失礼します」
扉を開けると、ほっぺたを膨らましてピアノに寄りかかっているマローネの姿があった。
「で、今日のスイーツは何よ?」
マローネは体勢も変えず、そういいはなった。
「今日は私特製のミルフィーユでごさいます。紅茶の方はダージリンを用意させていただきました」
テーブルにそれらを置くと、マローネはなにもいわずにいすに座り、紅茶を飲み始めた。こうして喋らなければ、それなりに絵になるのだが……。
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