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「……んだ」
「え?何?」
僕が呟いた言葉を聞き取れなかったらしく、彼女は聞き返してきた。
でも、もう遅かった。
彼女の喜びは恐怖に変わっていった。
絶望に、色を変えた。
「壊したいんだ 君を」
月の光を受けて鈍く輝く銀色を彼女の背中に突き立て、僕はにこりと微笑みながら、今度は彼女が聞き取れるように耳元で、そっと囁いた。
ナイフの銀色が美しい赤に染まっていく。
彼女の赤を吸うかのように、赤く、美しく。
銀色から迸る彼女の赤は、まるでもがれた羽のように宙を舞う。
「ごめんね」
彼女の瞳から止め処無く溢れる涙を、僕はそっと拭って言った。
「大好きだよ」
遠のく意識の中で、彼女は何を思ったんだろう。
僕への怒り?憎しみ?悲しみ?
「 」
彼女の最期の言葉は聞き取れなかった。
でも、息も途絶え、僕の腕の中で冷たくなりながら眠る今も尚、僕を愛してくれるなら
僕は
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