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手に握られた、鋭利な銀色。
呆然と立ち尽くしたまま、私は自分の犯した罪を見下ろした。
真っ赤に染まったまま動かない、私の大切な人達。
その人達と同じくらい真っ赤に染まっている自分。
どうしてこんなことをしてしまったのか、どうしてこの方法を選んでしまったのか。
頭の中を疑問ばかりが渦巻いている。
それでも、もう後戻りが出来ないということだけは、はっきりとわかった。
両親、兄弟、友達。
大切な人達が、その身体に真っ赤な花を咲かせて息絶えている。
私が 殺した。
ほんの数時間前までは、一緒に笑っていたのに。
ほんの数時間前までは、一緒に話していたのに。
ほんの数時間前、ほんの、数時間前までは───…。
私は、精神的に追いやられていた。
特に誰のせい、とか、そういうのではなくて、自分で自分を追い詰めすぎて、切羽詰っていた。
勿論、みんな心配してくれた。
心療内科に行って精神安定剤を貰って、毎日毎日、絶望を見ないように必死に自分を繕って、必死に生きてきた。
でも、それがいけなかったんだ。
世話を焼いてくれる両親が鬱陶しくなってしまって。
心配してくれる友人が信じられなくなって。
何もかもが敵に見えて、自分自身しか信じられなくなって。
世界が崩れていく音が、私の耳にははっきりと聞えた。
自分で自分の首を絞め続けた結果、私は自分だけしか認められなくなっていた。
いや、自分すら認められなくなっていたのかもしれない。
何もかもが自分を裏切っているように思えて仕方が無かった。
そうして、押さえていた絶望が再び見え始めていった。
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