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「今、君達は学生だけどどうする?産むか、おろすかの二つの選択肢があるが…」
「産みます」
愛海が、ハッキリとした口調で告げた。
その熱意が、目から火が出んばかりに溢れていた。
医師も笹岡も、思わず愛海を凝視した。
「避妊の不注意でできてしまった赤ちゃんですけど、赤ちゃんができたのは運命だとマナは思います…それが十六歳っていう年で出来ちゃっただけで、学校も辞めなくちゃいけないけど…一つの命を守るなら、そんなこと厭いません」
年配のその医師は、にっこり微笑んだ。
「リュウ君がどう思おうと、言おうと、マナは育てるよ」
愛海は笹岡の方に向き直り、目を見た。
「わかった。愛海がそこまで言うんなら、俺も責任をとる。検査薬の反応がでた時点でもう覚悟は決めてたけど、今やっと、学校辞めて働こうって決めれた。ありがとうな、愛海。二人でがんばって、育てていこうな」
笹岡は愛海の手を取った。
愛海の両目から涙が流れ落ち、診断証明書をもらって、家に帰った。
両者の親に説得をするのは、いくらか時間がかかったものの、笹岡の真摯な反省の態度と出産への熱意に負けて、とうとう印が押されたのだった。
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