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「…奈々!」
瞬間的に顔をぱっと明るくさせ、愛海の頬が、ピンク色になった。
「来てくれたんだ…こっち来なよっ!いっぱいお話、しよ?」
入口で竦んでいたあたしの足は、愛海に手招きされて少しずつ愛海の元に進んでいく。
愛海のベッドの横にきたとき、ふいに込み上げる懐かしさで、あたしの呼吸はあさくなった。
「わあ、花束だあ…ありがとう!すっごくキレイだあ!後で花瓶借りて、飾っておくね!」
無言で差し出した花束を受け取り、あたしの想像以上に、愛海ははしゃいだ。
「なんだか…ほんと、久し振りだね」
「だね…奈々、始業式の日、ごめんね。取り乱しすぎた…」
「ううん、いいよ。あたしも言い過ぎた…」
愛海は口をつぐみ、花束をじっとみつめた。
「あのね、マナ、産むんだ」
「…うん」
「避妊を迂闊にしていたことから出来ちゃった子供だけど…それでもやっぱり命はあるし、それでもマナを選んできてくれたんだ、って思うんだ…だって、だってね。もしかしたら、マナは子供が出来ない体質だったかもだし、この先に何かあって、子供ができない身体になってたかもしれないじゃん…そう考えたら、いま出来たのは、神様からのプレゼントなのかなって…」
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