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「…え?どういう、こと?」
口許に引きつった笑いをうかべて、開かれた愛海の目は濁っていた。
「そのままの、意味だよ。
あたし、ずっと愛海が好きだった。それに気付いたのは…春だった。愛海の笑顔も、泣き顔も、怒った顔もぜんぶ、あたしが守っていきたいって思ってたんだ。でも愛海は…笹岡と付き合って…子供ができた。だけど…」
「やめて!!」
劈く悲鳴のような強い声は、外の豪雨さえ忘れるほどだった。
「やめてよ…そんな冗談、マナは聞きたくないっ!目を覚まして、奈々!」
「ちがうの、冗談じゃないの!あたしは昔も今も、ずっと本気なんだよ!」
「嘘つきっ!」
部屋に響いたこの声は、誰のだろうと、一瞬耳を疑った。
けれどそれは、目の前で顔を真っ赤にして歯を食いしばっている愛海を見れば、一目瞭然だった。
「嘘つきっ!そんな嘘いわないでよ!そうやって、マナの安心をかき乱さないで!妊婦なんだよ?ただでさえ情緒不安定なのに…そんなこと…」
真っ赤に充血した瞳から、大粒の涙が牡丹雪のように落下した。
「嘘じゃないよ…本気だよ…」
「やめて…やめてよ。気持ち悪い…」
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