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きもちわるい…
その一言は、あたしの人生を崩すのに十分な破壊力だった。
瞬きも呼吸も全て忘れて、あたしは息を切らしている愛海を見つめた。
目の前の少女はぐしゃっと前髪をかきあげ、溜め息を大きくついた。
そして握っていた花束を、乱暴に床に叩き付けた。
その拍子に折れた花の茎が、すでに死んでいるのは確かめなくてもわかった。
「…出てって」
あたしは足元に散らばった無残な死骸たちを、ただ見ていた。
「出てって、今日は出てって!」
金切声で強く訴えた少女は髪を振り乱し、目の端から涙を垂れ流している。
たちまち体の震えが尋常じゃないくらいおきてきて、あたしの足は二、三歩後退りをすると、バネに弾かれたように
走り出した。
この時のあたしと愛海は、人間じゃなかった。
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