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少年は、体に軽く力を込め、直ぐに力を抜く
それを数回繰り返すと、地面に降ろしていた剣を片手で掴み、しっかり構えた。
先程少年が寄り掛かっていた大きな木
それは、この森の中で最も大きくそびえ立つ大木だった。
その幹は、見上げる程の高さと少年が両手を広げてやっとあと少しで端から端まで指の先が届く位の太さがある。
その表面には無数の傷痕がついており、その数から、今までどんなに多くの斬撃を受け止めてきたかが伺える。
「今日も頼むぜ!」
少年は、張り切った様子でそう言うと、目を閉じて集中し始めた。
少年が集中し始めると直ぐに剣に変化が起きた
元々赤い刃先が、燃えるような赤い光に包まれて、それが剣全体を覆った。
「でぇえやあぁあ!」
少年はカッと目を開くと、両手で剣をしっかり握り、大木目掛けて打ち込んだ。
すると、大木の幹は紙切れのように裂け、その表面に新たな傷痕が残された。
そうやって何度か大木に打ち込むと、突然
少年は大木に弾かれ、よろめいた。
「はぁ、はぁ……これくらいが限度か」
息を切らした少年が、何度大木に打ち込んだのかは定かではなく、少年自身も数えていなかった。
だが、上がった息と
弾かれたと言う事実が彼に限界を知らせた訳だ。
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