始まりの炎

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「しゃーねえな、あまり厄介事に首を突っ込みたくはなかったが」 少年は、茂みから出ると、素早く背中の剣を握った。 目があるのかは分からないが、奴は少年に気付いたようで、鎌首を持ち上げ、雄叫びを上げた。 【エンカウント】 それは遭遇……未知なる敵や敵意のあるものとの戦闘を意味する ノデゴンスライムの尻尾部分をうねらせ、長い首を上げたり下げたりする動き、それは到底無機質な魔科学の産物とは思えぬ、生き物らしい動きだった。 茂みの中に残された少女は、何かを感じた (何だろう……この感覚? 私はこの感覚を知っている気がする) 少女の体は、少年に握られた時からずっと火照ったまま、その鼓動を早めていた。 それと同時に、何か自分も彼の傍に居なければ成らないような気がして、少女は茂みを出た。 「な、あぶねえって」 少年が、少女を制止するのも聞かず、少女は、腰のホルスターから黒光りする銃を素早く抜き、奴に向かって構えた。 「ああ、もう! とにかくやってやるぜ!」 少年は、奴がチャージ動作に入った隙に、腹部目掛けて斬り込んだ。 水が分断される音と共に、奴の腹部に切り傷が出来る……はずだったが、さすが液体、それは次の瞬間には元に戻ってしまった。
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