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漆黒の闇
月明かりに照らされ
妖しく浮かぶ
とある研究所
その一室で、少女は眠っていた。
ひと二人が悠に入れるであろうそれは、少女の揺りかごとなり、ゴポゴポと怪しげな音を立てながら、薄暗い室内をぼんやりと照らしていた。
実験用のカプセルの中で、天使のような優しい表情で眠る少女
綺麗なブロンドの髪は、一糸まとわぬ体を隠すように覆うと、緩やかに揺れている
白く美しい手足は、水をまるでベールのようにまといながら浮かんでいた。
(……アルナ)
未だカプセルの中で表情を変えず眠る少女の心に、優しくも、どこか哀しげな女性の声が、微かに届く
(……テ……ルナ……私の……)
女性の声は先程より強く、しかし、途切れ途切れに少女の心に響く
それまで水に揺られていた少女の体が、声に反応するように小さく動いた。
(エレメントを探すのです……そして魔……を)
そう聞こえた所で、突然女性の声は途絶えた。
(……エレメント……)
少女は、心の中で一度だけ小さく呟くと、ゆっくりと目を開けた。
茶色の瞳に光が宿ると、少女の体を胸から中心に、蒼白い光がゆっくりと体全体に広がり始め、その光が指先まで来た時、カプセルに異変が起きた。
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