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それは、もはや人間の動きではなかった。
いきなり目の前に現れた少女に前方の一人がヒッと情けない声を上げた
―刹那
男の体は、意図も簡単に壁に叩き付けられた。
「う、うああああ!」
その後方にいた男は、直ぐ様護身用の剣を引き抜き、少女に斬りかかる
しかし、少女のか細い手は、大の男の手を体ごと捻り、男の剣が床に音を立てて虚しく落ちると、その後くる闇雲(やむくも)な左ストレートを華奢(きゃしゃ)な体を艶やかに回転させ、その間に取り外した槍で一閃
最後に残された男は、完全に恐怖に駆られ、動かぬ体を何とか這わせてその場から逃げ出したが
時は既に遅く、死神とも思える少女は、ゆらりと男の前に現れ、素手で男の体を引き上げ、既に息絶えた二人へ向け男を捨てるように放り投げた。
……それはほんの数秒間の出来事だった
今さっき駆けつけたばかりの男たちの命は、たった数秒で終わったのだ。
「いたぞ~!」
「逃がすな!」
「こっちだ!」
その後もいくつもの声が廊下に響き、そして直ぐに聞こえなくなった
「あ、あ……あ、ば、ばば化け物だぁ!」
次々と男たちの命を容易く奪う少女に向けられた最後の言葉
その言葉を聞いた少女は、一度うつむき、数秒動きを止め、キッと男を睨み付けた。
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