俺の非日常

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 屋上から二階へ続く階段を下りる最中、授業終了のチャイムが鳴った。四限目の終わりを告げると同時に昼休みの始まりを告げる合図。  人が行き交う賑やかな廊下を渡り、人が少なくなった自分の教室に入った。ある者は食堂に行き、ある者は体育館にバスケットボールやバドミントンをしに出かけたり、またある者は図書館へ静けさを求めに行ったりと、その行き先や目的は様々。ここに残っている連中はせいぜい弁当を持参して友達同士で和になり楽しく団欒(だんらん)している奴らばかり。  自分の席に腰を下ろし、特に何かをするでもなく頬杖をつく。目は焦点が定まっていないけれど、とりあえず頭は黒板の方を向いていた。  ガヤガヤと賑わう廊下からの騒音や、教室で席を寄せ合って話す住人たちの話し声は、煩(わずら)わしくて仕方がない。  何の変化も訪れない彼等や彼女等の日常。  今日の澄み切った青空にすら苛立ちを覚えたのだ。逆に言うと、そんな彼等や彼女等に怒りを覚えない訳がなかった。  呆けていても頭をよぎる思いは一つしかない。なるべく考えないようにしているが、どうしようもない程に自然と頭の中に現れるのだ。視界の隅にとらえてしまう誰もいない隣の席。  その上に一枚、鮮やかなピンク色の花びらがあった。言うまでもなく桜の花びら。いつからあったのかは分からないが、この花びらも校舎内の何処からか旅をしてきたのだろう。  いや、もしかすると……。と思い、今日屋上で見た桜の花びらと頭の中で重ね合わせてみたりしたものの、同じものか違うものかなどは到底判る筈もなかった。  目線を下に逸らすと俺の机の中には白い紙が見え隠れしていた。  机の奥に無理矢理突っ込んだつもりだったが、いつの間にか机の出入り口までたどり着いたようだ。クシャクシャになった一枚の手紙。それが何なのかは、確認するまでもない。
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