航跡14:追憶

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中国は日米韓との交渉に入った。 日本の要求は、国境付近のガス田採掘プラントの撤去、賠償請求等の要求に留まった。 国民からは、特に殉職者の親族からは大きな反発があったが、中国との国交のさらなる悪化を危惧する政府の意向と周辺国への配慮での判断だった。 が、中国が北朝鮮に開戦をけしかけたという事実が明かになり、北朝鮮に対する賠償請求を、現在の北朝鮮が支払える額ではないとして、中国に肩代わりを要求。 現時点では中国が全額を支払い、後々その半分が北朝鮮から支払われる事でまとまった。 北朝鮮では米主導によるものの、韓国の憲法を見本にした新憲法が制定され、当然のように政府自体も新しく設置された。 新北朝鮮政府は、「国民の自由、平等、民主化を強く進める事に、南北統一の光を見出だした」と発表。 それに対し日本政府は、友好な国交を持ち、できる限り支援したいと表明した。 翌年 12月07日15:50 呉 「あれから1年だ。東京も大分復旧してきたみたいだ」 「そうだな。倒壊家屋も阪神大震災ほどじゃなかったからな。耐震設計様々だな。ところで島田は今艦長をしてるんだろ?」 「ああ。3月に就役したいぶき型2番艦、つるぎのな。今年は観艦式だったからよ、横須賀にも行ったんだ。今は休暇取って来てんだ」 「俺は今あしがら艦長だ。俺は偶然寄港したんだよ。よりにもよってアイツらの命日にな」 「どっちもイージス艦かよ。まぁ弾道ミサイル撃ってくるような国はそうそう無いだろうが、もし撃ってきたなら、今度は俺らが国民の盾だ!頼りにしてるぞ須藤~」 「貴様もな。おれは16:00には出る。佐世保に帰るんだ。じゃあ、また機会があればな。」 「おう」 「ちゃんとアイツのカミさんとガキに挨拶してから里に帰れよ!里に帰ったらアイツの墓にもちゃんと参るんだぞ!!」 「へいへい。じゃあな!」 須藤は自分の艦に駆けて行った。 数分後、桟橋に出港ラッパが鳴り響く。 それと同時にマストに数種類の国際旗旒信号旗が揚がる。 我「あしがら」出港す 「護衛艦が、出港する。配置において、適宜見送れ」 「帽振れー!!」 今日も艦は出港する。 日本を、国民を護るために。 我「いぶき」出港す:完
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