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舫いが完全に解かれた。それを見送る他の艦からの放送が聞こえた。
「護衛艦が出港する。配置において、適宜見送れ。」
向かい側に停泊している「さざなみ」の艦長がウイングに出て敬礼し、阿部と島田副長はそれに答礼した。
マストに数種類の国際旗旒信号旗が上げられた。その意味は、
「我「イブキ」出港ス」
それに続きいかつい声のアナウンスが鳴る。
「きょーつけ!!左、帽振れーー!!」
左舷側にずらりと並んだ乗員が一斉に帽子を振る。それに答えて岸壁や停泊中の艦の乗員も帽子を振るなり敬礼するなりしている。
「出港完了。両舷前進半速。」
帽子を被り直した阿部は操艦に戻り艦橋内に入って行った。
「関門海峡に針路を取れ。」
「いぶき」に続いて「ちょうかい」も出港した。両艦は単縱陣を組み静かに母港を後にした。
航跡1:終
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