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「両舷前進原速、赤25!海峡を通過する。逐次対岸との距離知らせ!」
「両舷前進原速ー、赤25!」
航海長の須藤 直大二等海佐の命令が響き、「赤25」の命令に従いエンジン出力調整がされる。
艦橋のインターコムが「ブッ」と1回鳴り機関室に連絡が行く。
「赤25回、赤25!」
機関室では計算表に従いスロットルとスクリュー翼角が操作される。
目標出力、翼角に達した所でインターコムが「ブッ、ブッ」と2回鳴り、担当員が、
「両舷前進原速、赤25回転翼角整定!」
と、航海長に報告する。それを後続に知らせるため
「マーク赤25、マーク赤25!」
と、艦橋後部の旗甲板に報告し、赤25を示す信号旗がマストに揚げられる。
「いぶき」と「ちょうかい」は夜中の関門海峡をゆっくりと通過し、隠岐の島北方海上へ針路を取った。
阿部はここで初めて乗員に任務内容を伝える。
「艦長より達する。ラジオ等で知っている者もあるだろうが、首都圏で地震が発生した。現在首都、政府は極度の混乱状態にある。これを期にテロが蜂起する恐れがある。弾道ミサイルが発射される可能性もある。今のところそれは分からないが、我々は、首都壊滅の危機を回避するために弾道ミサイル警戒任務を与えられた。つまりこれは演習ではない!今までの訓練の成果を十二分に発揮し、日本を護れるよう最善を尽くしてもらいたい。以上。」
乗員達は最初はキョトンとしていたがやがて理解した。自分達はこの為に、日本を護る為に訓練してきたのだと。
「対潜、対空、対水上見張りを厳となせ。これより半直にて当直につけ。航海長操艦、両舷二戦速、赤黒無し。」
「はっ、航海長いただきます!両舷二戦速、赤黒無し!」
「両舷二戦速赤黒無し回転翼角整定ヨーソロ!」
「いぶき」は一気に21ノットに増速し、目標海域に向け猛進した。
数時間後、目標海域に到着した「いぶき」と「ちょうかい」はSM-3の発射態勢を取った。
その50マイル東方には「あたご」、「きりしま」の姿があった。警戒態勢を取って10分も経たないうちにその報告は滑り込んで来た。
「対空レーダーに感!目標北朝鮮座標!数量30を確認!ノドンです。テポドンは含まれていません!」
阿部は反射的に命令を下した。
「対空戦闘ー!ミッドコース内で迎撃する。もたもたするな、直ちにSM-3発射せよ!!」
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