航跡3:音紋

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 毎分3000発の凄まじい弾丸の雨が降り注ぎ、同時に毎分40発の砲弾が壁を作る。 海面にはまさに壁のような水柱がそそり立つ。各2門の発射数を合計すれば、毎分6080発が発射される計算になる。 主砲から「ガラン、ガラン」と音を立てながら薬莢が排出される。  射撃を開始してから5秒と経たないうちに、凄まじい弾幕をかい潜るこてはできなかった魚雷は「いぶき」の数百m手前で爆発した。 その直後、さらに2本の魚雷が発射された。  「魚雷音さらに聴知!数量2、急速接近!」    休む間もなく主砲とCIWSは絶え間無い砲弾を撃ち出し、2本の魚雷はすぐに撃破された。  「推進音聴知!方位210度、速力10ノット。音紋分析、「ロメオ」級潜水艦合致!!」  「ロメオ」級潜水艦とは、今や中国と北朝鮮しか実戦配備していない旧式潜水艦である。 水中速力も13ノットしか出ない。「おやしお」級や「はるしお」級のように、魚雷発射管から対艦ミサイルを発射することはできないが、代わりに機雷を敷設することができる。  「魚雷音聴知!数量6、距離2マイル!!」  「クソッしつこい!迎撃、迎撃しろ!!」  立て続けに来る雷撃にさすがの島田副長もイラ立ちが隠せないようだ。射撃を開始した直後、予想外の事態が起こった。  「CIWS1、2番、エンプティ・コール!!残弾ありません!!」  「畜生!やっぱりか!!砲雷科員は直ちに給弾に向かえ!!」  「はっ!!」  「気休めでもいい!回避運動だ!!取り舵一杯!!」   艦橋にいる阿部は眉間にこれでもかという程のシワを寄せて叫んだ。  「魚雷3迎撃成功、距離500!」  「各防水扉厳重閉鎖、総員衝撃に備えー!!」  全ての乗員が手を止め、主砲の砲声だけが艦内に響いた。 残り3本の内2本は撃破したが、1本はついに主砲の迎撃圏を越えた。ゴンッと小さな衝撃を受けたかと思うと、下から突き上げるような衝撃が「いぶき」を襲った。  「船体に大激動!!」    「被害報告急げ!!」    「右舷第1煙突付近直下に被雷!!火災は発生してませんが右舷に大破孔!!」  「ダメコン急げ、機械室に浸水させるな!!」  「いぶき」は大破の被害を被るも戦闘行動に支障はなく、全兵装を使用することができた。 奇跡的に戦死した者も無かった。
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