第一章前編 落ちこぼれと生徒会長と金髪お下げと

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反対側の歩行者信号が点滅する。 オレもアクセルを煽っ……… ブァァァン!!ブァァァン!!! うるせー!! くどいようだが本当にうるさいぞこのバイク。 と、 フォン!!フォン!! 野太いエンジンの唸りが隣から聞こえてくる。こんなにも腹の底に響くような重低サウンドを発している心臓の持ち主は一体どんな化け物なんだ? 少なからず未知なる相手に気分が高揚してくる。アクセルを捻る手にも力が入る。 「リューイチー!!、前見ろ前!!」 前方に移した視界に入る、全てが紅く灯った信号。 すなわち、もうじき正面の信号が碧く灯るという前触れ。 こうなったら総長式スタートだ!補足すればただ単にアクセルを最初から開けっぱなしでクラッチだけでスタートする、いわゆるヘタレスタート。だって俺クラッチミート下手くそだもん。 バァバァバァバババババ!!!! ストッパー当たるまで捻ったアクセルについてこれないエンジンの回転数はレッドゾーンに入り頭打ちになる。 こうなったらクラッチ滑ってもいいや。どうせ後ろのバカの単車だし。 そのバカがエンジンの咆哮に紛れて「おいぃぃ!!壊れちまうってぇぇ!!」と悲鳴あげてた気がするが一切気にしない。 隣の隆太もまるでそのフルフェイスの奥の口をニヤリと釣り上げるようにアクセルを更に吹かす。 ここまで書いといてあれだけど、読者の皆は無意味な空吹かしはやめような? ガソリンも無駄だし、何よりメーワクだからよ。 で、改めて思うが読者てなんだ? 正面の信号が、歩行者用と共に碧に染まる。 バァァァァァァァン!!!! フォォォォン!!!! やっと抵抗を得たエンジンがタイヤを通して馬のように地面を蹴り進む。 もう、隣を見る余裕はない。ただ分かるのは俺の視界に隆太がいない。 てことは……… 「よっしゃ!前に出れた!!」
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