第一章前編 落ちこぼれと生徒会長と金髪お下げと

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「くっそがぁ………!! 意地でも突き放してやる!!」 躍起になった俺は後ろのバカの事も構いなしに次のコーナーに飛び込む。 だが………… 「あっ……!! ブレーキ遅れちまった………!!」 全力で減速するも間に合わずオーバーランしてしまい、反対車線にはみ出す。 まだだ………まだ終わっちゃいねぇ!! 即座にバイクの向きを変えようと藻掻いていたが、 「あっ!!!」 ‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡ 「フフフフ…………闘争本能丸出しだね。」 龍一が必死に逃げようとあがいていた頃、後ろをかなりの手加減で様子を見るかのように着いてきたZZRの佐藤隆太はまるで獲物を狙う狼の如く静かに龍一のライディングを観察していた。 「やっぱり素質はあるね。あんな改悪車でよくもあそこまで引っ張れるもんだよ。」 ヘルメットシールドの奥に光るぱっちりした目を細め、納得したように笑う隆太。 「ではでは、仕上げにこの世界の厳しさを教えるとしますかっ!!」 隆太は一気にアクセルを捻り、今まで2速に固定してたギアを3速に蹴りあげた。 ZZRの地の底からはい上がるようなエンジン音がこだましはじめる。 「次の左コーナーがいいかな? もしかするとそこでしくじるかもね? 龍一君は。」 と、そんな憶測を立てていると…… 「ほら、やっぱりね。」 その隆太の瞳には、明らかに速度超過してコーナーに突っ込む龍一達の焦りを表すかのようなCBの光るブレーキランプが反射していた。 ‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡ 「なっ……………!!」 一瞬見とれてしまった。 それほど、隆太のライディングは華麗だった。 オーバーランし、コーナーの内側が空けてしまった。左のミラーに隆太のZZRのライトが映り直感的にいけないと判断し直ぐに内側に寄せようとした。 しかし、それをなんともなさげに今度は空いたコーナーの外側から俺達を抜いていったのだ。しかも、抜く際に俺達に手を振りながら。 「くっそぉぉぉぉ! 待ちやがれぇぇぇぇ!!!」
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