プロローグ アイツとオレの初めての出会い。

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ウィーーーーーーン…… 今、オレの実家まで結構緩めに飛ばしてる。軽いツーリングだろうかな。 この排気音よりカムの駆動音の方がでかいエンジン音ともおさらばだ。 「おっ、見えてきたな。」 徐々に近づく我が実家。1年前まで住んでいた所ってのはなんか切ないな。 自慢じゃないが他の家よりほどほどにデカイ。何故なら完全に密閉されたシャッター付きの車庫が車4台分あるからだ。しかも全部独立式。 恐らくコレを見たら先程までありきたりなボロアパートのイメージを抱いていた読者の皆様は間違いなくこの家の住人(オレ)の生活環境のギャップにビビるはずだ。 一番左の車庫の前にインパルスを止める。 ふと見ると、我が家の玄関の門が開き中年の女性が出てきた。 「あら、亮介君?」 このおばさんはこのもとい、オレの家の借り主の玉田さん。因みにモトGPの玉田選手とは一切関係ない。 「どうも。ご無沙汰してます。」 「久しぶりねぇ。元気してた?」 玉田さんとこの奥さんはホントに人が良く、アパートの家賃を払う以外に米を毎月送ってくれたりおかずをお裾分けしてくれるんだよ。 だからどんなに財布の中が寒くても白米の味は忘れた事がない。 「はい、おかげさまで。」 「今日は………もしかしてアレを取りに来たのかしら。」 アレとは勿論、母の形見の事。 「ええ、やっと限定解除できたので。」 「う~ん。気を付けなさいね?あなたに死なれたら圭介さんと亮子さんに申し訳が立たないし。」
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