第一章前編 落ちこぼれと生徒会長と金髪お下げと

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「彼はね、去年お母さんを亡くしてるの。私はこの事を佐藤くんから聞いたわ。道理で彼、入学当初死んだような顔をしてたもん。」 母親を亡くした……? しかも去年だと………? 「その割には、今偉く前向きじゃないか?普通親が亡くなりゃ1年以上は引きずるもんだろ……。」 オレは物心ついた時にはすでに父さん母さん共に亡くなってた。 だからか、今心の奥底では銀崎に同情してしまう。 「多分ね……いつも一緒にいる仲間達のおかげよ。私がこの保健室の窓から見てるとあの子たちいつもイキイキしてるもの。」 仲間……か。 昔はオレも仲間だと思ってた奴らがいた。 だが、そいつらは所詮オレの腕っぷしの強さに頼るためだけに近づいてただけだ。 「仲間なんざ……笑わせる。」 「そうね……あなたは心の底から笑った事無いでしょ?」 ………どういう事だ? 「仲間と共に笑い合って一生懸命試練に向かっていく。あなたはそんな経験無いでしょうね。」 ………ねぇよ……そんな事…… 「あなたにも必要よ?このご時世、一匹狼は辛い事しかないわよ。」 そうか……無駄な意地張ってきたが……そろそろ潮時かもな…… 「そうかもしれない…。」 「あなたの今後はあなた次第よ。」 そういって先生は机に向き直りシャーペンで書類をチェックしだした。 オレ次第か。 とにかく、今の自分とはっきり区別するためにも……銀崎とタイマンだ。 「世話になったな。」 「いえいえ。」 先生の声を背に、保健室を後にした。
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