第一章前編 落ちこぼれと生徒会長と金髪お下げと

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西本はそう言い返すと資材置き場をキョロキョロと物色しだした。 「なんか適当な長さの棒がないか……」 そうつぶやき辺りを捜し回っていた時に鉄パイプを見つけ、注目する。 「これでいいか。隆太、そこどいてくれ。あぶないぞ。」 そういって西本は静かに腰に鉄パイプを回すと扉に向き合い腰を落とした。 なんか昔の時代劇でもみてるようだな。 西本が目を閉じ、息を吐き出すと、 カッ! 急に目を見開き、扉の丁度鍵穴を睨み付け腰から鉄パイプを抜き打った。 「秘技……、解錠剣!!!」 ガキィィィィィン!!! 凄まじい金属音が響き、不意に扉がガバッと開いた。まったく、なんつー便利な技だ。 説明しよう。これは完全な西本の受け売りだが、鍵の歯車のガタ次第で衝撃を与えるだけで歯車を回し鍵を開けちまうのだ。よって使えるのはボロっちい鍵穴だけだ。 この技のポイントはただ打ち付けるんじゃなく壊れるか壊れないかのギリギリの境界線を見いだすことらしい。 因みに解錠拳なるものもあるらしく西本が教えてくれたが正直めんどくさくて覚えられなかった。 「じゃ、ドア開いたことだしトツニュー!!!」 隆太が元気よく屋上に飛び出して行く。 俺達も隆太に続いて屋上に出た。 「すごい………」 「きれいだな、これは」 怜奈や西本が口々につぶやく。なにがきれいかと言うと屋上から一望できる街の様子とそれをまんべんなく照らす夕日だった。 確かにきれいだ。この夕日の美しさを表現することばは山ほどあるが俺にとっては表現する事自体めんどくせぇ。
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