第一章前編 落ちこぼれと生徒会長と金髪お下げと

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「どなたですか?さっきの彼さんは。」 怜奈が不思議そうに麗奈先輩に尋ねる。 先輩はどことなく考える様な素振りを見せ、笑顔で答える。 「ひ・み・つ!お客様のプライバシーは堅固たる秘密主義の下に成り立ってるのよ。」 えー、そりゃねぇよ。せめてヒントだけでも…… 「まぁ、教えられるとしたら貴方達とタメで真面目な子。大きい買い物としてあのマシンをご成約よ。」 と言ってピッと指差した先は…… 「CB1300じゃーん。すっごーい。」 隆太の言う通り、ホンダCB1300スーパーフォア。国内のホンダの旗艦だ。 て、なかなか買える値段じゃねーだろ。 「金持ちのボンボンじゃねーの?」 「こらっ!高山君、失礼な事言わないの。確かに貴族階級の家柄だけど自分で働いて一括払いしたのよ、彼。」 そりゃまた偉いこって。 「ならここにもいるじゃないッスか。頑張って金貯めてFZ6に成り上がろうとしてる健気な若者が。」 と、俺自身を差しながら自負してみる。 「そういう事は泣き落としで半額も値引きしてもらった人が言う事じゃないわよ。しかもまだお金持ってこないし。」 う……痛い所を。 そりゃ確かにTZRの改造費にバイト代飛んでるけどさ、ちゃんと貯まってるんだぜ?先輩。 「そのうちちゃんと金持って引き取りに来ますから……ご勘弁を。」 「まったく、先が思いやられるわ。あの子見習いなさい? 全く値引き無しよ? ま、その分サービスしといたけどね。」 ニヤリと不敵に笑う麗奈先輩に俺や隆太達も苦笑いしてしまう。 ホント、先輩にはかなわねぇな。
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