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諦めていた。
蓮華に加えて恋まで学校にくれば当然、平和な学園生活なんてありえない。
わかっていた。
燈也にはわかっていた──けれど、いくらなんでも早すぎる。
既に周りでは「燈也くんって女たらし…」とか「両手に花かよ…」とか「神にでもなったつもりか!」とかざわざわしてる。いや、まぁ神なんだけど…。
「え~…まぁ、二人とも燈也の両サイドが空いてるから適当に座っとけ」
「あら、ずいぶん都合がいいわね?まぁいいや、どうせおばあ様がしてくれたんでしょ」
いまだに羞恥で固まったままの燈也の隣まで歩いていって、揺する。
「燈也くん、授業始まるよ?ほら、座ろ?」
「あぅぅ…!なんで蓮華さんがこっちにいるんです…むぐっ?!」
言いかけた燈也はいつも蓮華が都合悪くなると使ってくる『蓮華の果実』攻撃を食らった。
クラスがどよっとざわめく。
ふんわり甘い香りが鼻をくすぐって、一瞬だけ、あ、別にどうでもいいかも…とか思うけどすぐに考え直す。
けれど蓮華は燈也を動けなくする手段を知っていた。
きつく抱きしめていた手をゆるめ、顔半分が埋まったままの燈也に自分の顔を見せる。
「ごめんね!朝、ひとりぼっちで寂しかったよね…?燈也くん甘えん坊さんだから一緒にいたかったよね…」
「ふむっ!?」
居たかった。寂しかった。
けれどわざわざそれをクラスメートの前で言うか!燈也は蓮華の狙い通り真っ赤になって固まるのみだ。
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