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結局なんやかやで一限目をサボった燈也達は二限目の始めに教室に戻ってきた。
確か、数学のはずだった。
そして担当の先生は汐留先生という初老の男性…のはずだった。
「おそい!単位あげないぞ?」
「お次はマリア?なんだか何でもありね…。マリアに数学なんて教えられるのかしら…」
「多分…無理かと…」
そんな会話をしていたのが耳に入ったのか、マリアは黒板に何かを書いてゆく。
「今日は、フェルマーの最終定理について!」
クラス中が首を傾げる。
しかし、燈也は知っていた。
これが数学界史上最大とまで言われた究極の問題で、少なくても高校生が関わる問題ではないことを。
「バカなことをやってないで普通に授業してください…」
燈也の平和な学校生活は前途多難だ。
☆
意外なことに、マリアの授業は普通だった。
むしろかなりいい方の部類に入る。テストも近いので結構真剣に授業を受けていた燈也の耳が不意に雑音を拾った。
「ねぇねぇ恋ちゃんだっけ?可愛いよね~…どう?そんなちんちくりんほっといてさ、今日どっか行かない?」
べきっ、と燈也のボールペンが折れた。
しかし、燈也が何事か行動を起こす前にチョークが飛んだ。
「ふごっ!?」
どれだけの力を込めて投げたのか、チョークが直撃し、粉になってしまった。
醜いうめきを上げて恋に話しかけた男子生徒は後ろに倒れた。そんな彼に恋が視線を向け、一言。
「ごめんなさい、燈也さんを悪く言う人とは視線も会わせたくありません。というか…鏡を見て燈也さんとご自分を見比べてくださ…いえ、燈也さんが汚れますからやっぱりなにもしないでください」
一言じゃなかった。
なんかあらゆるものを粉砕された男子生徒は机に戻ったあともうつむいて動かなくなってしまった。
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