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家々の間をぬうように狭い路地を走り抜ける二つの影。
人通りもなく、車の騒音や風、虫の声も聞えない無音の世界と言ってもいいくらい静かでその者達以外の気配を感じられないのだ。
家の塀に映し出されたのは、男の影と頭から細く伸びる角のようなものを持つ異形の影が素早く通り過ぎて行く。
「逃げ足だけは、早いやっちゃなぁ」
呆れたように異形の影を追う男が発した。
その男の手には、三又の矛が月光を浴びて鋭く輝いている。
いりくんだ路地から車道へと出た異形の者は、低く唸り声をあげながら二足歩行から四足になると速度を上げ、地を這いながら脇見もふらずに走って行く。
後を追う男は、追うのに飽きてきたのか持っていた矛をやけくそのようにおもいっきり投げつけた。
異形は、それをジャンプしてかわし、矛の柄に着地すると再び跳躍した。反対側へ渡ろうとした。
「あかん!はずしてもうた!」
男は、わざとらしく頭を大袈裟に抱えた。
その時ビュッと風を切るような音と共に人影が異形のものの前へと飛び出して行き、容赦なく異形の体を貫いた。
もう一人、いたようだ。攻撃を外しても矛を持つ男が焦らなかったわけだ。
異形の体を貫いた者が道路の向こう側にいた矛を持つ男を無言で睨みつけた。その瞳は、金色に光り闇の中に妖しく輝いている。
その背後では、異形のものが煙を上げ、砂となり跡形もなく消えてしまった。
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