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真新しい制服を着た沢山の生徒達が校門を潜って行く。
正門の両側には、小さな狛犬がのっているという変わった高校だ。
校舎の三階の窓から双眼鏡で校内に入って行く生徒を眺める者がいた。
「いたか?」
部屋の奥には、大きな机と黒塗りの座り心地のよいソファーが置いてあった。
そして、幾人かが部屋の中央にある向かい合わせのソファに座り、暇そうにしていた。
そこに足を組み、眼鏡をかけ、本を読んで座っている偉そうな少年が言った。
「おう。おるで、おるでぇ。可愛い嬢ちゃんが!」
今にも涎がたれそうな顔をして一生懸命に見入っていた。
「真面目にやれ」
たんたんといつもの会話のように本を読んでいる少年がたしなめた。
「…へい、へい」
やる気のない返事を返し、ニヤニヤと怪しい顔つきで校門を見ている。
どうやらこの偉そうな少年には、逆らえないようだ。
「で、いたのか?」
読んでいた本を静かに閉じた。
「いんや。さっぱりやね。本当に現われるんかねぇ」
双眼鏡を覗いていた少年が振り返った。
「現われるさ。必ずね」
髪を後ろで縛ったかなり見目のいい少年が部屋の扉を開けて入って来た。
「時間か?」
部屋の奥で本を読んでいた少年が立ち上がった。
「さぁ、皆も立って! 式が始まるよ」
本を読んでいた少年を先頭に次々と部屋を出て行った。
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