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少し寂しかった
3日後にはまた仕事が始まる、と言うことは2日後の夜くらいにはもう帰らなくてはならない
案の定、2日後の夜には仕事の準備をしなければならない、と言われた
時が流れるのをこんなにはやく感じたことはなかった
最後の夜がやって来てしまった
しかも、その日は私の誕生日だった
彼が買ってきたワインとケーキで小さなパーティーの様なことをした。楽しかったが、寂しかった
そんなとき、彼の持ってきた鞄が倒れ、偶然一枚の紙が出てきた
そこには堅苦しい字でこう書かれていた
『辞令
東京本社への異動を命ずる』
えっ...何これ...
見ている文字を何度も見返した。
何度見ても同じ
東京への異動命令の辞令
そこへ、トイレから彼が戻ってきた
「あ、見ちゃったか」
頬をかきながら照れくさそうに笑った
「ねぇ、これ、本当なの?」
「うん、誕生日に見せようと思ってたんだけど、見られちゃったか
でも、本当のプレゼントはこっち」
そう言って、彼は自分の鞄の中から小さな箱を取り出した
その箱の中には、7月の、私の、誕生石のルビーの指輪が入っていた
「これって...」
「実夏、結婚しよう」
ずっと待っていた一言、本当に嬉しかった一言、たった一言だけど私は本当に嬉しかった
「ど~しよっかな~」
いたずらっぽく言った
でも、すぐにバレちゃうな。私の顔を見られたら
だって今私、嬉しすぎて泣いてるから
それに気付いたのかな?彼は私を抱きしめてくれた
その一ヶ月後、私達は結婚式をした
私はその時誓った
この人に一生を捧げようと
どちらかが動けなくなるまで一緒にいようと
義彦は私の誓い気付いてくれるかな
まぁ、気付かなくてもいいや
だって、きっと義彦も同じ事考えてると思うから
結婚式が終わって披露宴の時、私はそっと、誰にも、ううん、たった一人に聞こえる声でささやいた
「義彦、大好きだよ」
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