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崖の上から大地を見下ろす一匹の狼がいた。
「狼よ。」
すると、何処からともなく狼に語りかける声がした。
「神か!」
野性の本能なのか?狼は、何の迷いもなく天に向かって叫んだ。
「晴れの日も雨の日も風の日も大地に住む人間を見ていている狼よ。もし、お前が人間になりたいと思っているのなら、人間にしてやるぞ?」
「なんだと!?」
「狼よ。人間になりたいか?」
「人間にしてくれるのか!」
「ただし狼よ。一度人間になったなら、元の姿に戻る事は出来ない。それでも人間になりたいか?」
「もちろんだ!!」
「本当にいいのだな?」
「迷いなどない!!」
「そうか。ならば狼よ。目を閉じるがよい。」
「………。」
「狼よ。お前の望みは叶った。目を開けるがよい。」
「………ん?」
「どうだ狼よ。」
「どう言う事だ!!」
「どうしたのだ?」
「何だこれは!!」
「それが人間だ。」
「確かに人間だがこの姿は………老人ではないか!!」
「狼よ。当たり前だ。お前を人間の歳にしたのなら、80過ぎの老人なのだからな。」
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