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「ふぅ…、今日も新人研修か。なんか最近それしかしてない気がするぞ、あの社長め。」
わたしは社長室を出て、一階の受け付けロビーにある自動販売機に向かう。
「さて…と、今日は何を飲もうかな。」
カチッ、ピーッ、ガシャン
「あら、セオリさん、今日もコーヒーですか?」
後ろから声が聞こえ、わたしは振り向いた。
そこには、短いブロンドの髪をところどころ跳ねさせた、金色の瞳の20代半ばの女が立っていた。
「あぁ、今日もブラックだよ、レリィ。砂糖が入ってるのは甘ったるくて飲めたものじゃないからな。」
女はクスッと笑いながら、自分も自動販売機の前に立ち飲み物を選ぶ。
「わ、た、しぃ~はぁ~、ん~っと…、これっ。」
レリィはそう言うと、いかにも甘ったるそうなミルクティーをチョイスする。
カチッ、ピーッ、ガシャン
「たまには甘いものもいいですよ、朝とかは甘いものを摂ると頭の活性化が早いそうですから。」
そんなことを言いながら甘そうな匂いを漂わせミルクティーを飲むレリィ。
よくそんなものが飲めるもんだ。
わたしもブラックコーヒーを開け、軽く口を付けたとき、レリィが口を開いた。
「そういえばセオリさん、最近新人研修ばっかりらしいですね。どうですか、最近の新人君達は?」
「う~ん、そうだな、なかなか粒が揃っていると思うぞ。この前研修したシュウってやつはドラコンを1人で倒したし、他にもロビンってやつは、あのガレンと戦って大きな傷はなかった、なにより卵を持って帰らなかったしな。」
わたしはまるで自分のことのように自慢気に話していることに気付き、苦笑した。
「セオリさん、よっぽどまぢっくきゃっするが好きなんですね。期待の新人が続々入ってくる話をして、頬が緩んでますよ。」
「ハハッ…、そうだな、わたしはまぢっくきゃっするが好きだ。新人研修もやってみると意外に楽しいものだな。」
まるで、レリィに言葉を導かれるようにわたしはそう言った。
さっきまで愚痴っていた新人研修が急に楽しみになってきた。
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