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たぶんかなり普通の休日
「…………。」
秋の風が肌に心地いい。
拙者の短髪がそよそよとなびいている。
風はいい。自分が生きていることを実感させてくれる。
「せいやっ!!」
目の前を舞い散る一枚の木葉を一刀両断に斬りつける。
フワッ
木葉は剣圧による風で横に避け、刀は当たらなかった。
「まだまだ修行が足らん…か。」
師は言っていた。
『邪念なく欲なく力なく、無心で断てばその太刀すべてを斬らん。』
と。
(まだ拙者は無心になりきれてないのであろうな。)
ガサッ
「!…レニアスか…。」
木の後ろから、違うよ、と言わんばかりにぶんぶんと手を降る。
この不思議で意味のわからない行動をとるような奴は拙者の記憶の中にはレニアス以外存在しない。
今日は仕事が休みなので、この森林の中に修行に来たのだが、どうも今日は考え事がすぎる。
仕方がない、今日はレニアスと遊んでやるか。
「そっちが出てこんなら拙者からそちらに行こう。」
またもや、木の後ろから「いえいえ、ここに人なんていませんよ。」とばかりに手を振るレニアス。
手を降っておきながら存在を否定する。
どこか滑稽で憎めない奴だ。
拙者は手が見えた木のそばまで近寄り、木の裏を見る。
しかし、そこには誰もいなかった。
「隙ありだよっ!ナハトっ!」
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