9月25日 木曜 曇り

8/12
前へ
/25ページ
次へ
「君はアリスかい?」 「違うよ。私はツクル。本木 創」 猫の問いに、私は普通に答える。 「ツクル…」 私の名前を復唱し、首を傾げてなにかを考えるような仕草をする猫。うわ!可愛い!やべ、グッときたよ!やっぱり奇妙でも珍妙でも猫は猫!可愛いんだよなぁ… 「ツクルはアリスを知らない?」 しばらく考え込んでいた猫が、また私にそう聞いてきた。 「この学校にそんなメルヘンな名前の子はいません」 いや、先輩とか先生とかだと分からないけどね。でも確か一年生には居ない筈。 しかしアリスって、『不思議の国のアリス』を彷彿と… あぁ! 「お前どっかで見たと思ったら!」 ビシッと猫を指差す私。猫は私の突然の大声にビックリしたのか、元々大きい瞳をさらに丸々と大きくして、突き出された私の人差し指(今は猫差し指。なんちゃって)をマジマジと見つめる。 「“不思議の国のアリス”に出てくるチェシャ猫!」 「そうだよ」 思い付いた、この珍妙な猫の正体を叫ぶと、猫 ―チェシャ猫― はあっさり…肯定しちゃったよ!? 半信半疑ってか、ほぼ思い付きだったのに! 「マジ?」 「マジってなに?」 こっちが聞いたのに聞き返された! 「マジってゆうのは、“本当か?”ってこと。あと“本気と書いてマジと読む”とか…じゃなくて!」 ビックリし過ぎて普通に解答しちゃったけどそうじゃなくてっ! 「マジで“チェシャ猫”?不思議の国のアリスに出てくるチェシャ猫?」 「そうだよ」 ニンマリした口をまったく動かさずに、チェシャ猫はさっきと同じ答えを返してくる。 てか、よく口を動かさずに喋れるなぁ。腹話術師になれるよ、うん。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加