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「君はアリスかい?」
「違うよ。私はツクル。本木 創」
猫の問いに、私は普通に答える。
「ツクル…」
私の名前を復唱し、首を傾げてなにかを考えるような仕草をする猫。うわ!可愛い!やべ、グッときたよ!やっぱり奇妙でも珍妙でも猫は猫!可愛いんだよなぁ…
「ツクルはアリスを知らない?」
しばらく考え込んでいた猫が、また私にそう聞いてきた。
「この学校にそんなメルヘンな名前の子はいません」
いや、先輩とか先生とかだと分からないけどね。でも確か一年生には居ない筈。
しかしアリスって、『不思議の国のアリス』を彷彿と…
あぁ!
「お前どっかで見たと思ったら!」
ビシッと猫を指差す私。猫は私の突然の大声にビックリしたのか、元々大きい瞳をさらに丸々と大きくして、突き出された私の人差し指(今は猫差し指。なんちゃって)をマジマジと見つめる。
「“不思議の国のアリス”に出てくるチェシャ猫!」
「そうだよ」
思い付いた、この珍妙な猫の正体を叫ぶと、猫 ―チェシャ猫― はあっさり…肯定しちゃったよ!?
半信半疑ってか、ほぼ思い付きだったのに!
「マジ?」
「マジってなに?」
こっちが聞いたのに聞き返された!
「マジってゆうのは、“本当か?”ってこと。あと“本気と書いてマジと読む”とか…じゃなくて!」
ビックリし過ぎて普通に解答しちゃったけどそうじゃなくてっ!
「マジで“チェシャ猫”?不思議の国のアリスに出てくるチェシャ猫?」
「そうだよ」
ニンマリした口をまったく動かさずに、チェシャ猫はさっきと同じ答えを返してくる。
てか、よく口を動かさずに喋れるなぁ。腹話術師になれるよ、うん。
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