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目を惹くのは真っ白いエプロンと窓から差し込む夕日にキラキラ輝いている金髪。
遠めなので、外見的特徴はそれくらいしか確認出来ないが、一目で日本の公立高校の中にいるには“異質”だと分かる。
まるで陽炎のように、不確かで、今にも消えてしまいそうに、異質な少女は、こちらに顔を向けて、微笑んでいる。
目は見えないのに、何故かその口元だけ、ハッキリと確認できる。
夕日に照らされて微笑む少女。
怖い…
綺麗だけど…怖い。
あの少女は…本当に“アリス”?
さっきはパッと見ただけでなんとなく“アリス”だと思ってしまったが、じっくり見ると……私が『不思議の国のアリス』に抱いているイメージと違う。
しかし、チェシャ猫は少女を“アリス”だと言った。私が持っているのは、あくまでも『不思議の国のアリス』を読んで勝手に抱いている“アリス”のイメージだ。
幻想と現実は別物。
だから現実の本人を見て、思ってたのとイメージが違う、なんて別に珍しいことじゃない。
けれど…
「アリス…」
チェシャ猫がアリスのもとへ行こうと、私の腕の中でもがいている。
私は無意識に、それを止めるように、余計にキツく、チェシャ猫を抱き締める。
本当なら、チェシャ猫を離して、アリスのもとへ行かせるべきだ。彼はアリスを探しにきたのだから…
けれど私の中では警鐘が鳴り響いている。
『駄目だ。危険だ。彼女に近付いてはいけない!』
何故そう思うのか、根拠なんてない。ただ本能が告げるのだ。
あれは触れてはならない“モノ”だ…
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