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その台詞に、不覚にも動揺して蹴りの軌道がそれ、空振りしてしまった。
ついでに私が休む間もなく繰り出していた追撃も止み、悠々と腕を組み、感慨深げに何度も頷くボケ男。
「そうかそうか。ツクルってば、なんで俺にいつもそんなにつっ掛かってくるのかと思ってたら、俺のカッコよさに照れてたのかー♪
なに?愛情の裏返しってやつー?」
「はぁぁぁっ!?なにお前気持ち悪い勘違いしてんだよ!?
しかも、なんで“俺のカッコいい”になってんだ!?私がカッコいいって言ったのは名前だ!な・ま・え!
私はなぁ、お前みたいな愚息にそんなカッコいい名前をつけた親御さんを褒めてんだよ!誰も親の期待裏切って成長しとる親不孝者なんかこれっぽっちも“カッコいい”なんて思ってねぇんだよ!」
「またまた、照れんな照れんな♪」
「照れてねぇー!怒ってんだよ!お前には私の全身にほとばしっとる怒気と殺気が見えねぇのかコラァ!!」
「漫画じゃあるまいし、そんなもん見えるわけねぇじゃん♪」
「見えなくても感じるだろ!なんとなく分かるだろ!お前どこまで鈍感なんだよ!とことん空気読めねぇな!」
「空気は読むものじゃない。吸うものだ!」
「なにその“良い事言った”みたいな顔!?めっちゃ私の怒りの琴線に触れたんだけど!?
死ぬか!?死にたいのか!?その歳で三途の川を拝みたいのか!?地獄の片道切符が欲しいのか!?」
「あ、出来れば往復で。帰って来れないじゃん」
「いやいやいや、片道切符ってゆうのは“帰ってくんな”って意味だよ?嫌味だよ?
…てかお前本当に大丈夫かよ!?」
なんか色々心配になってくるよ。あんまりにも酷くて!
そんなに空気読めなくて、この世知辛い世の中で生きていけるのか!?
「あはは」
笑いごとじゃねぇよ。
……こいつの相手をしようと思ったのは間違いだったな…ドッと疲れた。まだ一日の始まりだってぇのに………ん?
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