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ドドドドドド…
現在オリンピック選手もビックリなスピードで校舎内を爆走中。
よっしゃぁぁぁ!このスピードなら余裕!…遅刻には変わりないけど…この階段を上がれば教室はすぐだぜ!
「あ、おい本木」
「のはぁぁぁっ!?」
突然通りすがりの古典教師に引き止められた。腕を掴まれて…
い、痛い…腕痛い…グィーってなった…ビキッとかいった!腕の筋が!
「な、なにしやがるツルリ!お前ツクルは急に止まれないって標語知らねぇのか!急ブレーキは体に負担がかかるんだぞ!
てか昨日といい今日といい!なんでお前は私の進行を邪魔すんだよ!
今、昨日の恨み+今日の鬱憤がさらに加算されたぞ!
償え!私の無駄に溜まるイライラを解消しろ!その毛根を死滅させて解消させろ!」
「は!?いや、ちょっと待て!止めろ!髪を掴もうとするな!本当に“ツルリ”にする気か!」
「ウルセー!名を体で現せや!」
「わけ分からん!…いや、そうだ!昨日!昨日のことを謝ろうと思って呼び止めたんだ!だから落ち着け!」
「は?」
ツルリの言葉に、フサフサ髪に伸ばしていた手をいったん引っ込める。
はて?確かに私情的にはかなり、昨日のことは怒っている。変なことに巻き込まれたし…
しかし、客観的に見れば、先生が生徒に用心を頼むのは別に普通のことだし、私もその委員だったわけで、本当なら先生が謝ることではない。
なのに謝る?
「……まさか昨日の非常識ニャンコは先生の仕掛けか?」
「は?ニャンコ?」
私の台詞にぽかんとしているツルリ。
……なんだ違うのか。…まだ現実で私をハメる為に作られた悪戯だったら気持ちの整理がつくのに…
「ま、まぁなんか分からんが、取り敢えず謝る。
昨日は無駄足踏ませて悪かったな」
「………無駄足?」
先生、いったいなにを謝っているんですか?
「いやぁ、まさか福津(ふくつ)先生が出張で、図書室が開いてなかったなんて知らなくてなぁ。あんな重いもん運ばせて悪かったな」
…………はい?
「…開いてなかった?」
「開いてなかっただろう?」
唖然としている私を見て、不思議そうにそう確認してくるツルリ。
「そういえばお前、昨日運んだ本、いったい何処に置いたんだ?」
図書室の前かと思って見に行ったらなかったぞ?と、また不思議そうに聞いてくるツルリに、なんと言ったらいいものか…悩んでいる内に、一限目終了のチャイムが鳴った…
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