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「………にが…」
「ん?」
「な・に・が・『やぁ、ツクル』っだぁぁぁぁっ!!」
腕を大きく振りかぶって、私はチェシャ猫思いっきり…
投げた。
ベシャッ
「んごっ!?」
見事なスピードでまっすぐ飛んだチェシャ猫は、私の狙いどおり、薄ら笑いを浮かべながら呑気に傍観していたボケ男の顔面にクリーンヒット!
ボケ男はのけ反って、そのままドターッと後ろに倒れた。
ふははははっ!朝の仕返しじゃ!
チェシャ猫に思いっきり顔の上に乗られ、口も鼻も塞がれてしまったボケ男は、バタバタともがくが起き上がることが出来ない。
いい気味だ。
「私でも投げられるくらい軽い猫なのに退かせないとは情けないな軟弱者!
チェシャ!そのままその男の上から退かなかったら、昨日私を置き去りにしたことは帳消しに…」
「コラァァッ!なにやっとるんだお前らー!!」
私がボケ男を抹殺する為の命令をチェシャ猫にしようとした瞬間、勢いよく教室の引き戸が開けられ、鬼の形相をした数学教師が現れ、私の声をかき消した。
チッ!あと少しで完全犯罪(?)だったのに…
「仕方ない…。先生!私アホ男子のアホな行いばかり見ていて気分が悪いので早退させて頂きます!」
そう叫ぶと、私は教師がいるのとは反対のドア、教室の後ろの引き戸に向かって走る。
そのさい、ボケ男に乗っかったままのチェシャ猫を素早く拾い上げて、持っていくことも忘れない。
「コラ、待て!何処に行くんだ!」
誰にも邪魔されないとこだよ!
心の中で捨てセリフを吐きつつ、教師の声に振り向きもしないで教室から飛び出す。
事の成り行きを見守っていたクラスメート達を押し退け、廊下を疾走する。
それにしても、朝から走ってばっかだなぁ…私。
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