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その日俺の目の前に、日本刀を持った血だらけの少女が落ちてきた。
所々斬り刻まれたブラウスから覗く白い肌が、やけにエロい……って、それ所ではない。
「大丈夫……っすか?」
俺の言葉に気付き、キリッとした切れ長の瞳を俺に向け、やたらと長い日本刀を俺の首元に向け一言
「死ね」
喧嘩や悪ふざけなどで、何度かその『死ね』という言葉と出会ったことはあるが、今俺に向けられた『死ね』は本気で殺意を感じる言い方だった。
いや、彼女が役者ならそれくらい鬼気迫る演技を出来るかも知れないと、辺りを見渡してみたが夜道にカメラなどなく、チカチカと付いては消える薄暗い街灯があるだけだった。
「いや、ちょっとタイム」
と言って聞き入れてくれるわけもなく、切っ先が喉に触れた。
日焼けした部分を針で刺されたかのような鋭い痛みを必死に堪え、日本刀を持つ彼女に目で合図を送る。
俺は敵じゃない。
ライオンに喉元を咬まれ死ぬ間際のシマウマみたいな俺の瞳が、日本刀に映った。
「あんた誰?」
俺の敵意皆無の瞳に気付いてくれたのか、彼女はさっきまでとは全く違う、気の抜けた顔でそう呟いた。
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