ナギスペシャル

19/21
前へ
/126ページ
次へ
動け動け動け動け動け動け動けっ! 頭上で刀が光る。 ヤバっ、俺の負けだ。 こんな所で死ぬのか? 畜生……。 目は絶対に閉じるもんか。 見開いた目に、藤の影が映る。 「斬れバカ!」 これはナギの声か? そういえばまだ謝ってないんだよな……。 相手が刀を振り下ろしたけれど、音はなにも鳴らない。 死んだか? いや、藤だ。 藤が親指と人差し指で、刀を抑えている。 「早く! 長くは保たないから」 藤の震える右腕と、俺の震える両足を見つめて、息を大きく吸い込んだ。 一突きだ。 ただソレだけでいい。 なのにソレが出来ない。 情けねぇな、オイ。 ビビり。なに女に護ってもらってんだよ。 畜生。 もうどうにでもなれ! 勢い良く伸ばした左腕から、プスっと何かを破る感触が全身に回る。 「っう」 相手が漏らした言葉と時間差なく、胸から噴き出した血飛沫が顔にかかった。 「止めるな! もう一撃」 頭のずっと奥の方で、何かが吹っ切れた気がする。
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加