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ああ……血生臭いな。
刀を抜くとまた勢い良く血飛沫が弾ける。
もう一突き、今度は心臓目掛けて刺す。
世界がスローになる。
自分の心臓の音が煩いくらいに聞こえる。
今ならなんでも出来る。空すらも飛べる気がした。
胸を突き刺す音が響いたと同時に、元に戻った。
さっきとは比べ物にならない量の血が噴き出て、少ししてから相手は力なく地面に崩れ落ちた。
勝った? 勝ったのか。
高ぶっているのがわかる。体内の血が沸騰しているんじゃないかって思うくらいだ。
「痛っ!」
そんな高ぶる気持ちを冷ますかのように、ナギの拳骨が頭に飛んできた。
「なんですぐに刺さなかったの? 藤がいなかったら死んでたよ!」
「いや……」
「まあまあ勝ったんだし」
「藤は口出ししないで」
「ハイハイ」
確かに藤がいなければ死んでいた。我ながら情けないな。
「絶対に躊躇してはダメ。戦いに情は必要ない」
「わかってるけどさ……俺、人を殺したんだぜ?」
自分が怖い。
戦いとはいえ、殺したんだ。
「常に自分の中で正義を貫く。正義は曖昧だから揺らぐこともあるけど、どんな時も自分を信じなさい」
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