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「なんだかなあ……」
「死んだらどうするのよっ!」
「タマは頑張ったし、いいじゃん。まあうちのアドバイスのお陰だけど」
「ってオイ、ナギ?」
ナギの瞳が月明かりを鋭く反射させた。
「……なに」
ぶっきらぼうで乱暴な声が、なぜか愛おしい。
「泣くなよ」
「泣いてない」
「泣いてる」
「泣いてない」
「泣いて――うをっ! 暴力は禁止」
静かな夜に藤と琴音の笑い声が響く。
結局俺は3発も顔を殴られ、勝ったのか負けたのか良くわからなくなった。
「そろそろ空間凍結を解除するよ」
と、琴音がいう。
空間凍結? なんだっけか。
あっ、そうだ。
「ナギ」
「なに?」
もうナギの瞳に涙はなく、真っ直ぐな瞳が俺を見た。
「さっきは無神経で、その……ごめん。まだ正義とか部活道とか良くわからないし、覚悟もないけど、頑張るよ。俺強くなるから」
言ってて恥ずかしくなるな。
強くなる。とは言ったモノの、本当に強くなれるのか?
「別に……」
「アレ? まさかまた泣いてる?」
「泣いてない」
「わかった! わかったから振り上げた右腕を下ろしてくれ」
「タマ……」
「ん?」
「お疲れ様」
涙を浮かべながら微笑むナギの顔を、月明かりが優しく照らしていた。
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