第三土曜日の覇王

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 一方で若者達は妙にはしゃいだ様子だ。 「スゲーなこんな気合いの入ったチーム、どこだよ?」 「バーカ、覇王だよ。俺らの地元じゃ、サイコーのチームさ」 「お前、地元って横浜だろ?」  キップを切られて、免許証まで取り上げられてるというのに、無邪気な様子。若者特有の高揚感がある。  確かにバイクに取り付けられたナンバープレートの多くは横浜、もしくは湘南、横須賀、相模。誰もがこの辺では見ない特攻服を羽織ってる。 「とにかく本部に連合だ」 「ああ」  それで警官達も冷静を取り戻した、無線のマイクに手を伸ばす。  ガリガリ! 別な音が響いた。すり抜けようとするバイクがミニクーパーの脇腹を擦ったのだ。ミニクーパーの停め方が下手で、通路に少しはみ出していたのだ。  かろうじてバイクのライダーは無事なようだ。段ボールの補強がクッションの役割を果たしたのだろう。ヨロヨロとよろけつつ、その場を回避していく。 「お巡りさん助けて」 「ボクらの車じゃ怖くて」  それで若者達も危険を察してか、パトカーの後部座席に乗り込んでくる。  ちっと舌打ちする主任。それでも無下に追い出す真似はしない。新米が本部に連絡するのを見届ける。 「こちらPC25、族が…… 」 『ガガッ、族、南帝連合か?』 「判りません。とにかく一杯、凄い数」  しかし新米テンパってうまく内容を伝えられない。 「焦れったいな、貸せ」 主任が無線機を奪った。 「族の数は二百から三百程。さらに大きく膨れています。ナンバーは主に横浜、その他各種。南帝でないのは確かです」 『ガガッ、ではどこのチームだ。名は?』  その問いに主任は目の前の族の背中を凝視する。 「えっと、黒い特攻服。背中に書かれた文字は、真夜中の歌劇王。……えっと……」  しかし高揚感で喉がカラカラになり、上手く答えがだせない。 「ナイトオペラ。神奈川最強の集団」  若者が言った。族達が纏う黒い特攻服、その背中には、横浜、真夜中之歌劇王(ナイトオペラ)と刻まれている。 「第三土曜日の覇王、ナイトオペラさ」
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