孤高の転校生

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 ~一年後~  秋の空は高くて、やけに青い。  暑い季節は過ぎた筈なのに、まだ残る残暑でかすかに蒸し暑い。  そこは都内にある私立高校。授業中のグラウンドは、誰の姿もなくひっそりと静まり返っている。  沈黙を打ち破るように、ガラスの割れる音が響いた。  室内には異様な光景が広がっていた。 「キャー!」  口元を押さえ、咄嗟に叫ぶ女生徒。 「マジかよこいつ」  ワナワナと震え、壁際に回避する男子生徒。 「かなり喧嘩慣れしてるぞ」  食い入るように視線を向ける男子生徒。 「くそっ」  椅子や机が乱雑に転がる床には、開襟シャツ姿の生徒が倒れ込んでいた。 「……これ以上、まだやるのか?」  その手前、ひとりの生徒が揚々と立ち構えている。  ひとりだけ違う学ランを羽織った、額まで伸びる黒髪の生徒だ。その出で立ち、雰囲気からして、転入したての新参者らしい。
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