第三土曜日の覇王

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『ガガッ。……警視庁より入電、都内一号線近辺にて、マルソウ、南帝連合が集結の兆しあり。警ら中のPC各車は重点警備願います』  パトカー備え付けの無線機から連絡が入った。 「南帝連合ですって。最近、族の動きが活発化してますね」 「大規模集団(ラグナロク)が活動を休止してるからな」 「大規模な抗争に発展しなきゃ良いんですが」 「南帝が動こうと、そこまではならねーよ。奴らにそこまでの度胸はない」  淡々と会話する警官達。  パパー! クラクションが鳴り響いた。対向車線からだ。一台の車が慌てたようにブレーキを掛ける。  対向車線を五台のバイクがフルスピードで逆走しているのだ。ヘルメットは被っていない。羽織るのは黒い特攻服。  対向車線は比較的すいた状況だった。赤信号でせき止められ、数台の車が走る程度。それらをものともせず、バイクは悠然と駆け抜けていく。あまりにも堂々とした態度に、警官達も呆然と見入る始末。 「主任、族です、逆走です」 「ああ、そうだな。ここは任せた」  その新米の指摘で我に返る。逆走行為は明らかに違反行為だ。注意、及び職務を執行しようと、パトカーに向けて歩きだす。 「馬鹿な奴らだ。狭い日本、どんなに急ごうと、赤信号には敵う筈もない」  哀れにも族達は、赤信号に阻まれて動けずにいる。目の前は行き交う車も多い主要道路だ。袋のネズミとは、まさにこのこと。
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